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「ウクレレ PAITITI THE MOVIE」
特設ウェブサイト(アーカイブス)
☆ 映画の上映は終了致しました。ご鑑賞いただいた皆様、有り難うございました。

<よせがき>

 どんな人にも思い出深い少年少女時代があると思います。
ついさっきまで校庭の土の上で大ゲンカしていた相手と気まずい沈黙の間。一方が地面のアリをつまみ上げて遊び始めたら、なんだか相手もつられて一緒になって、アリつまみ大会勃発。しまいには相手の腕にアリをいっぱい這わせるのに夢中になって、気付いたら大笑いして2時間も経ってしまっていたとか・・。心に壁が無かった時代。あれは何だったのでしょう。公園の芝生にただ刺さっている鉄柵やメリーだけで何時間も遊べていた時代。こうして今でも思い出せるのは、きらきら夢みたいな純白の世界の気持ちいい記憶が、心とからだに残っているからなんでしょうね。


 僕らパイティティは60年代後半に小学生、70年代に中・高生でありました。小学生時分は、アメリカのテレビ番組のバットマン、モンキーズ。イギリスのテレビ番組のサンダーバードやスティングレー、キャプテンスカーレット、謎の円盤UFOを毎週欠かさず見ることに明け暮れ、日本では、ウルトラQ、怪奇大作戦、カッパの三平、丸でダメ夫、怪獣ブースカ、悪魔くん、ウルトラマンなどモーレツなテレビ特撮黄金時代。木馬座のケロヨンに泣きながらバイバイを告げ。ケロッと笑顔に戻って映画館に入ってみれば、初代ゴジラや初代ガメラが日本を救うために火を噴き吠えまくり、その大活躍ぶりが僕ら子供の瞳孔を開きっ放しにしていたわけです。


 当時、お菓子を買って当てる「おもちゃのカンヅメ」というのが大人気でしたが、買っても買っても、なかなか当たらないシロモノ。実際、自分でも一度も手にしたことは無いのですが、聞くところによると一回で当たった人もいるようですから、やはりクジ運というのがあるのでしょう。ものごころついて美術や音楽に手を染めるようになると、その頃胸に芽生え始めたどろっとした夢の固まりは、自分の手で搾り出せることに気が付いて来る。な~んだ。そういうことか。作っちゃえ。プラモデル黄金時代だったので練習はバッチリ。G.Iジョーの頭を引っこ抜いて、リンゴの皮をむくようにカッターで面取りしてエッシャーの彫刻のように造形してみたり、変身サイボークの透明なカラダにリカちゃんの頭をくっつけて、ロボ・リカを作ってみたり。やっちゃ行けないことをやっちゃったような・・。 けど同時にカラダのどこからか湧き出て来る未体験の甘酸っぱい達成感は何? ハハハ、何をやってんだか?


 世の中には、ひとつのジャンルをこんなにに突き詰める人がいるのかと、ビックリすることがありますが、僕が出合ったこの世界で初めての御仁は 原口智生さん。氏が「ウクレレ パイティティ・ザ・ムービー」で作り上げた世界は、金のエンジェル無限大の、まさに「オトナのおもちゃのカンヅメ」全部入りです。運は巡ってくるもんですね。まさかこんな特製カンヅメが頂けるとは思ってもみませんでした。嬉しかったのは、パイティティの音楽に潜んでいる60’sのエスプリを敏感に感じ取ってくださり、え?、マジでココに玉を投げるつもりなんですか?と耳をを疑いたくなるような原口氏独自のアイデア、僕らの心のストライクゾーン・ド真ん中に直球を投げ込んでくれたこと。ココに玉を投げられる人は滅多にいるもんではありません。ワンカット・ワンカットに込められた60’s 特撮魂に、またまた瞳孔開きっぱなしです。


 昨今、映画のSFXの世界に於いて、コンピュータ・グラフィックスの台頭によりフェードアウトを余儀なくされている特殊造形ですが、実際どちらもフェイク。どちらにリアリティーを感じるかでしょう。ディテールにとことんこだわった造形美術にメカニックを仕込んで、大人数でコントロールしながら撮影を進めて行くなんてことは、費用対効果の問題で、もう手が出せない領域になっているのも事実。いくら予算あっても足りない、贅沢中の贅沢品になってしまったわけですから。・・でも、それがここにあります(笑)


 釣り糸を消さない「パイティティ・エアラインズの飛行機」。あこがれのサンダーバードも真っ青の「アヤツリ・よりこ人形」。昭和29年に実際に東京渋谷駅上空を飛んでいた、幻の遊覧ケーブルカー「ひばり号」。さあ、みんなで一緒に乗りこみましょう。


 60’s世代の夢と希望が詰まった「オトナのおもちゃのカンヅメ」=「ウクレレ PAITITI THE MOVIE」は、原口智生監督から僕らパイティティへ、そしてご覧になられるみなさまへの、ステキなプレゼントだと思っています。今の御時世、こんなバブリーな映画を、やすやすと実現出来るのは、原口監督の他にいないでしょう。


  原口さんどうもありがとう。


僕らを乗せた現実逃避行船パイティティ号は大気圏を抜け、次なる目的地を目指してウクレレの糸をマキマキしま~す。

石田英範      


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